無給油軸受(オイルレス軸受)とは
無給油軸受(オイルレス軸受)は、外部からの給油に頼らず滑らかな摺動を実現する「すべり軸受」です。給油が難しい装置内部をはじめ、油の飛散を嫌う食品機械・半導体製造装置、高温や水中などの過酷な環境下で活躍します。
「転がり軸受(ボールやローラーで支持)」とは異なり、軸を面で支える構造のため、衝撃や荷重に強い点も特長です。薄肉でコンパクトに設計しやすく、装置の省スペース化にもつながります。
無給油の仕組み
無給油軸受(オイルレス軸受)には、主に2つの方式があります。
どちらも、潤滑成分が摺動面との直接接触を抑え、摩擦や摩耗を低減します。
- 含油方式
多孔質の材料に油を含ませ、摺動に合わせて油分がにじみ出る方式 - 固体潤滑方式

黒鉛(グラファイト)などの固体潤滑剤やPTFEなどの樹脂を用いる方式
無給油軸受の材質には「樹脂系」と「金属系」があり、用途や条件に合わせて選ばれます。
一般的な環境で使用する自動車や機械装置には、軽量で扱いやすい樹脂系がよく使われます。一方で、高温・高荷重や水中・真空といった厳しい環境下では、強度と耐環境性の高い金属系の無給油軸受が選ばれる場面が増えています。
無給油軸受(オイルレス軸受)の用途例
無給油軸受(オイルレス軸受)は、産業機械からインフラ設備まで、幅広い分野で使われています。
代表的な用途は次のとおりです。
| 自動車・輸送機器 | ワイパー、パワーウインドウ、サスペンション、エンジン周辺の摺動部 |
|---|---|
| 一般産業機械 | 油圧ショベルやフォークリフトの関節部、プレス機、射出成形機の摺動部 |
| クリーン環境 | 食品機械、包装機械、半導体製造装置(油飛散や異物混入を避けたい設備) |
| インフラ | 水力発電の軸受、ダムの水門、海洋設備(長期メンテナンスが難しい設備) |
無給油軸受(オイルレス軸受)が選ばれる理由
無給油軸受(オイルレス軸受)の最大の特長は「給油不要」です。
給油を前提にしないため、現場ではさまざまなメリットが生まれます。

保全コストの削減
無給油軸受(オイルレス軸受)は給油不要のため、高所や装置の奥など、給油が難しい箇所でも、メンテナンスの手間を減らすことができます。
日常的に手が入れにくい場所でも運用しやすい点が特長です。

クリーン環境の維持
油を使う設備では、オイルミストの配慮が必要になる場面があります。無給油軸受(オイルレス軸受)は、油の飛散を抑えやすく、食品機械、医薬品製造ライン、包装機械、半導体製造装置など、清浄性が求められる設備に最適です。
油分による粉塵の付着や、固着も抑えやすくなります。

安定した性能と長寿命
給油式のすべり軸受は、低摩擦で安定した運転が可能です。一方、条件によっては、摩耗や焼付きへの対策が必要になります。
無給油軸受(オイルレス軸受)は、高荷重がかかる場面でも、焼付きにくく長寿命です。
特殊環境で「無給油化」の悩みが増えている背景
近年の製造設備は高機能化・高付加価値化が進み、装置内の温度や雰囲気など、条件が厳しくなる傾向にあります。そのため、軸受も「高温」「真空」「水中」「薬液」といった特殊環境で使用されるシーンが増えています。
加えて、環境配慮やクリーン化の流れから、オイルフリー・グリースフリーを前提とした設計が求められるケースも増えています。
高温環境における課題
高温条件での使用が増えるなか、無給油軸受(オイルレス軸受)を検討する場面が増えています。
ただし、標準的な材質では耐熱温度が200~300℃程度を目安とすることが多く、限界を超えると劣化や焼付きが起こりやすくなります。
真空環境における課題
真空環境では、アウトガス抑制と摺動安定性の両立が課題になります。
黒鉛(グラファイト)系の固体潤滑剤は、大気中の水分子があることで潤滑性が安定しやすい材料です。水分子がほとんど存在しない真空環境では、摩擦係数が上がりやすくなります。
また、潤滑油は真空中で蒸発(アウトガス)しやすく、製品や周辺の汚染につながるため注意が必要です。
水中・海水・薬液中における課題
水中・海水・薬液中では、長寿命と安定稼働をどう確保するかが重要になります。
潤滑成分の流出が避けにくい場面もありますが、より大きな課題は、腐食や膨潤によって軸受そのものが損傷しやすい点です。
環境要求の高まり
環境保全やSDGsの流れを受け、設備仕様として「オイルフリー」「グリースフリー」を求めるケースが増えています。
潤滑油の使用を前提にしない運用や、使用材料の見直しが必要になる場面もあり、無給油軸受(オイルレス軸受)が選定候補に入ることが増えています。
これらの背景から、「高温」「真空」「水中」「薬液」といった特殊環境でも安定して使用できる無給油軸受(オイルレス軸受)が求められています。そこで選ばれているのが、大同メタルの「サーマロイ」です。
特殊環境に対応する無給油軸受「サーマロイ」― 大同メタルからのご提案

高温・真空・水中・薬液中などの特殊環境では、無給油軸受(オイルレス軸受)も使用条件に合った選定が重要になります。その選択肢のひとつが、大同メタルの「サーマロイ」です。
サーマロイは、特殊環境に対応可能な金属系無給油軸受シリーズです。金属母材に微細な固体潤滑剤(主に黒鉛)を均一に分散させた高密度焼結材をベースに、母材や潤滑剤の組み合わせが異なる複数のシリーズをご用意しています。

-200℃~+700℃までの幅広い温度域に対応
500~700℃の超高温域でも、母材と固体潤滑剤の組み合わせにより潤滑膜を形成しやすく、焼結炉の搬送ローラーや製鉄ラインの加熱炉など、潤滑油が成立しない設備でも焼付きリスクを抑えやすい点が特長です。

真空環境での使用に対応
真空中では黒鉛(グラファイト)の潤滑性が低下しやすいため、二硫化モリブデンなど真空中で機能しやすい固体潤滑剤を用いた仕様が選択肢になります。
液体潤滑剤を使わないためアウトガスを抑えやすく、半導体製造装置や真空蒸着装置などで検討しやすい軸受です。

水中・海水・薬液中といった液中環境に対応
水中・海水や腐食性雰囲気では、耐食性に優れた金属母材(ステンレス系、Ni系など)をベースに、使用条件に合う仕様を選べます。
薬液中でも、薬液の種類に合わせた材質選定が可能です。
〈サーマロイの想定用途〉
- 焼結炉の搬送ローラーなどの高温設備
- 製鉄ラインの加熱炉周辺などの高温部
- 半導体製造装置、真空蒸着装置などの真空機器
- ダム水門(ゲート)、海洋設備などの水中・海水環境
- 化学プラントや洗浄装置などの薬液環境
無給油軸受の比較 — 「分散型」と「埋込型」
「サーマロイ」は、金属母材に微細な固体潤滑剤を均一に分散させた、“分散型”の無給油軸受(オイルレス軸受)です。
一方、大同メタルでは、もう一つの方式として、金属母材に固体潤滑剤のプラグを埋め込んだ“埋込型”の無給油軸受「ダイスライド」もラインナップしています。ここでは、分散型と埋込型の違いを整理します。
〈無給油軸受の比較〉
| 分散型 | 埋込型 | |
|---|---|---|
| シリーズ | サーマロイ
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ダイスライド
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| 摺動特性 | ○ 滑らかな摺動が可能 | △ 動きに制約が出やすい |
| 材料強度 | △ 埋込型に比べ強度は低め (最高面圧:≦49MPa) |
○ 高強度・高面圧に強い (最高面圧:≦73MPa) |
| 耐摩耗性 | ○ 条件に合わせやすい | △ 条件で差が出やすい |
| 耐異物性 | ○ 異物の影響が出にくい | △ 異物の影響が出やすい |
| 耐熱性 | ○ 高温に強い (最高温度:≦700℃) |
△ 温度に制限 (最高温度:≦250℃) |
| 耐食性 | ○ 耐食性の高い母材を選びやすい (一般にNi系は耐食性が良好) |
△ 母材の選択に制限 (液体中ではプラグ膨潤に注意) |
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無給油軸受(オイルレス軸受)は、給油作業を減らせるだけでなく、設備の長寿命化やクリーン環境の維持にも役立ちます。オイルフリー・グリースフリーの要求が広がり、無給油化を検討する場面も増えています。
特殊環境での安定稼働を実現するうえでも、無給油軸受の選定はカギとなるでしょう。
〈こんな課題はありませんか?〉
- ✔ 高温・真空・水中・薬液などで、軸受トラブルを減らしたい
- ✔ オイルフリー・グリースフリーの要求に合わせて、無給油軸受を検討している
- ✔ サーマロイの適用可否や、シリーズの選び方を相談したい
「サーマロイ」は、特殊環境向けの無給油軸受シリーズです。
使用条件に合わせたシリーズ選定について、ぜひ一度ご相談ください。





